DNAに関する用語を解説致します。

遺伝子とは?

人間の身体を構成しているさまざまなタンパク質の構造や、それがつくられるタイミングを記述している設計図。この設計図は同時に自分自身を複製する機能も持っています。
現時点では、2~3万個の遺伝子があることがわかっていて、この設計図を書いている「文字」 に当たるものが、DNAです。

コピーミスが突然変異を生む?

身体をつくる細胞は分裂と死滅により常に入れ替わり、その度にDNAも複製されていきます。ほとんどは間違いを起こさずにもとのDNAの塩基配列はコピーされますが、まれにコピーミスが起きるのです。
精子や卵子などの生殖系列の細胞に起こった突然変異は、子孫に受け継がれ、変化を起こしたDNA配列を持つことになります。

DNA鑑定はどうやってできるの?

この突然変異の結果を利用するのがDNA鑑定です。
DNA配列の大部分は人類全体で共通です。しかし、突然変異によってDNA配列が変化することで、他人とは違う部分を持つことになります。変化を起こした当人とその親では、部分的にDNA配列の違いが生じ、それ以降の子孫は変化を起こした後のDNAを持つことになるため、他の人と区別ができるのです。私たちの持つDNAはこういった変化を起こし やすい場所がいくつかあるので、結果的にさまざまなDNAタイプが生まれるのです。研究者はこういったDNAの配列部分を調べて鑑定を行っています。

DNA鑑定で祖先(ルーツ)がわかる!?

DNAの系統と血縁は同じではないので、混同しないことが大切です。
現在のDNA分析でわかるのは、ある特定の遺伝子の道筋で、それが全てではありません。『自分の遺伝子セット』 を構成する2万以上の遺伝子の一つ一つが、膨大な数の祖先の誰かから伝わっているので、実際にはたくさんのルーツを持つことになります。自分のルーツを探すことは、自分を生んだ集団全体の起源を探すのにことになるのです。実際には自分に遺伝子が全く伝わっていない莫大な数の祖先が存在するため遺伝子を解析しても、自分の祖先すべてについて知ることはできません。しかし、親の持つDNAがそのまま伝わるものも存在しており、母から子供に伝わるのがミトコンドリアDNAで、男性に継承されるのがY染色体DNAなのです。この二つは少なくとも自分にそれを伝えた系統をさかのぼることができるためルーツ探しに使えるのです。

なぜミトコンドリアDNAで母方のルーツが分かるの?

ミトコンドリアは細胞内でエネルギーを生み出す器官です。核のDNAとは別の環状のDNAを持っています。これはミトコンドリア自体が本来別の生物で、およそ20億年前に宿主の 細胞に取り込まれて共生するようになったためだとされています。ミトコンドリアDNAは構造が比較的単純で、構成する塩基の数も遺伝子数も少ないため、1980年代から研究が続けられており、世界各地域のデータがかなり揃っているのです。
受精に際して、精子の持つミトコンドリアは卵子の中に入らないので、子供に伝わるのは 母親の卵子に含まれるものだけになります。そのためそのDNAも母から子供に伝わることになります。男子しか残せなかった家系では、ミトコンドリアDNAは子孫に伝わらないので、婚姻圏の小さな集団ではそのタイプは速やかに減少していくことになります。ちなみに、ミトコンドリアDNAは、その人の見た目に関係するものではありません。